昔の文章を読むと恥ずかしい。
なんでこんなに恥ずかしげもなく自己陶酔できたのか?
とはいうものの、
自分が書いた文章なので嫌いではない。
20年前に書いた映画の紹介文を見つけた。
30代のとき作っていたフリーペーパーに載せたものだ。
映画は『ひなぎく』(1966年・チェコ・スロバキア)。
2000年に札幌の「シアター・キノ」で上映され、
ダゲレオ出版からビデオも出た。
ーー例えば大切にしていたグラスを割ってしまったとき。
絶対見たいコンサートのチケットが取れなかったとき。
少し酔って携帯をいろいろかけてみたけど誰も出なくて、かえって人恋しくなったとき。
そんなときこの映画を見る。
見ているうちに少しへこんだ気持ちが膨らんでもと通りになる。
そんな不思議な映画だ。
そもそもストーリーがない。
最初から最後まで女の子2人がぴょんぴょん飛び跳ね、声をあげて笑い、ひたすら飲み食いする。
それだけだ。
水着姿で日光浴している。
片方が相手のほっぺを平手打ちした瞬間、ふたりとも草原に転がり込む。
シャンデリアの上に乗り、はしゃいでブランコのようにこぐ。勢いがつき過ぎて、次の瞬間、川にはまる。
牛乳風呂に入浴したまま、バスタブの牛乳を飲む。
部屋の天井からトイレットペーパーの切れ端をいっぱいつるして火をつける。
テーブルの上に乗り、ハイヒールで食べものを踏みつけながら歩く。
「生きてる、生きてる、生きてる」と言い続け行進する・・・。
なんといったらいいんだろう。
好きな女の子に
「私のどこがすき?」
と聞かれたときの気分に似ている。
話しかけてくるとき見せる一瞬の表情、まなざし、そのしゃべり方。
家まで送って車を降りるとき見せる一瞬のためらい、バイバイという消えそうな声、その後ろ姿。
ぜんぶ丸ごと好きだ。
理屈じゃなく、ただ好き、という感じ。
まるでこの映画に恋をしているみたいだ。