夜行列車が好きだった。
でもいまは、ほとんど走っていない。
定期運行しているのは「サンライズ瀬戸・出雲」だけだ。
北陸に来た2007年当時、金沢―東京間に夜行列車が走っていた。
寝台特急「北陸」と急行「能登」だ。
特に「北陸」の「B寝台ソロ」は、
個室なのに「首都圏フリーきっぷ」で利用可能だった。
気軽に乗れ、それでいて、ちょっとした旅の雰囲気を味わえる「ぜいたくな」列車だった。
一方、急行「能登」は下りが便利だった。
上野発が23:33と「北陸」より30分発車が遅く、
夜行バスを入れても、いちばん遅くまで東京にいることができた。
「北陸」とは違い、乗るのはいつも自由席だった。
寝台車もあったが、
窮屈なクロスシートにからだを横たえていると、
(学生時代はいつもこんな感じだったなあ)
と懐かしくなった。
しかし、今はもう、2つとも走っていない。
いずれも2010年3月13日に廃止されたのだ。
夜行で東京に行くなら、今はバスだけだ。
夜行バスは単なる安価な移動手段でしかない。
暮れゆく夜、
見慣れぬ車窓に少しの心細さと旅情を感じた、
夜行列車の旅とは違う。
人生に「if(イフ)」はない。
でも、
もし、もう一度人生をやり直せたら。
日本中に線路がはりめぐらされ、
日本中を夜行列車が走っていた
「あのころ」に帰りたい。