1983年、大学2回生の夏。
その日はクラブの夏合宿最終日で、
浜坂あたりの海岸で打ち上げをしていた。
わいわいとみんな大騒ぎするなか、
ひとり、浜辺で海を見ていた。
すると、1回生の女子がひとり、そばに来た。
同じチームの後輩だ。
「どうしたの?」
と問いかけたが、返事はなかった。
しばらくの間、
ただ、二人並んで、黙って海を見てた。
(なんかこれって、恋愛映画の1シーンみたい)
と思ったら、突然、
「なんで気づかないんですか、バカ!」
と言って、横から僕を突き飛ばした。
不意を突かれて、海中に身体ごと倒れ込んだ。
(なんなん、いきなり!?)
海水まみれで立ち上がって振り返ると、
もう彼女はいなかった。
数秒、とまどったあと、ハッと気づいた。
(もしかして、告られた?)
その夜、宿泊先で夏合宿の反省会があった。
同じグループの先輩から、
「おまえは、友だちが少ないのがダメやな・・・」
と、1時間ほど説教された。
(昼間、ひとりでおったんがあかんかったんか)
でも、でもな・・・。
(友だちはおらへんけど彼女はおるで)
(本人には未確認やけどな)
心の中でずっと反論していたのだった・・・。