2018年1月12日。
この冬最強の寒波でドカ雪になった。
この日から北陸地方は大雪が続き、それは、
と呼ばれることになる。
で、その日は新潟に出張する予定だった。
北陸新幹線が開通し、
金沢から新潟へは上越妙高経由が最短ルート。
それでも3時間9分かかる(2017年1月12日時点)。
こんな雪ではある程度の遅れは覚悟しなければ。
と思っていたら、それどころじゃなかった。
上越妙高からの特急「しらゆき」が運休になったのだ。
後から知ったのだが、
昨夜から信越本線の帯織 – 東光寺駅間で、
積雪によって動けなくなった新潟発長岡行きの普通電車が約15時間に渡って立ち往生し、乗客約430人が車内に閉じ込められていたのだ。
しかし、こんな日でも新幹線は動いている。
高崎経由でなんとか新潟にたどりついた。
「こんなに積もることはないんですよ」
と、タクシーの運転手。
新潟はもともと雪が少ないそうだ。
それが一日でこんなに積もり、驚いているという。
「いつ、お帰りですか?」
「明日です」
「‥‥‥」
それまで饒舌だった運転手が黙り込む。
(なんて運の悪い男だ)
そう思われたのだろうか。
その日、新潟市内の積雪量は10数年ぶりに80cmに達した。
仕事を終え、
予定通り夕食は名店「案山子」で。
誰もお客はいない(当たり前?)
「どこでもお好きなところにどうぞ」
客席で新聞を読んでいた店主が言う。
スタッフの女性はカウンターに座ったまま、スマホをいじっている。
全然お客が来なくて待ちくたびれたのだろう。
とても名店とは思えない緩い空気に少し鼻白む(はなじろむ)。
しかし、料理はすべて美味しかった。
見た目は普通なのだが、口にすると思わず笑顔になる味だ。
里芋の柔らかな歯ごたえ。
とろっとろの白菜の甘さ。
緑が美しい冬菜(とうさい)のみずみずしさ。
からしがぴしっと味を引き締めて、日本酒に合う。
今日の地酒は朝日山。
ぬる燗でいただいた。
やがてちらほらお客が現れ、気づけば満席だ。
長居は禁物。
勘定を済ませ、ホテルに戻る。
帰り道。
凍結した雪道を歩きながら考えた。
こんな大雪の日に、
ストレスなしに新潟まで来られて、
仕事をこなし、
美味しい料理と地酒でほろ酔いになり、
あとはホテルの暖かい部屋で寝るだけ。
(なんて運のいい男なんだ!)