プレゼン資料は見た目が命。
本書『センス0からの資料作成術』 (日比野治雄著)は、それを科学的根拠に基づいて解説しようとする。
なぜ見た目が大切なのか?
それは、
私たちの行動の背景には無意識レベルでの判断(内臓感覚*1)がある。
だから、見た目を美しくデザインすれば、人間は「使いやすい」と感じるからだ、
という。
美しくデザインするためには、生まれ持った感覚やセンスが必要では?と考えるが、
デザインはセンスではなく、心理学に基づくものだ。
と説く。
著者の日比野治雄氏(*2)は、デザインと心理学を融合させた「デザイン心理学」のパイオニアで、人の直感や潜在意識を科学的に数値化して解き明かし、デザインに活かそうとしている。
その効果とは、
② レイアウトや文章表現に工夫を凝らせる
③ 聞き手・読み手の行動をそっと後押しする
の3つにまとめられる。
以下、第2章から4章で、①②のコツやテクニックが披露される。
で、第5章は毛色が変わって、
③を実行するために行動経済学を応用しよう、という。
そもそもプレゼンはこちらの言いたいことを伝えるもの。
なので、聞く側に心理的リアクタンス(*3)が生まれやすい。
そこで、
行動経済学の「ナッジ(*4)」をプレゼンに応用しよう
という。
ナッジとは、ちょっと後押しするという意味で、相手に強制することなく自分の意志で行動するよう促す方法である。
有名なのは、アムステルダムのスキポール空港のトイレの例。

小さいけれどハエの絵が!
男性用トイレの小便器にハエの絵を描いたところ、男性はそれをめがけて用を足すようになって清掃費が8割減少したそうだ。
これをプレゼンテーションにも取り入れようということで、
敢えて比較対象を作ってさも自分から選んだ気にさせたり、
これを導入しないと売上アップの機会を失ってしまう、と失う痛みを強調したりする具体例が紹介されている。
以上、本書は気軽に読めて、スライドの見た目だけでなく内容の構成もアップできる、お得な一冊だ。
*2 有名なところでは、2021年には視覚的ストレスが少ないノート「ほぼ日ノオト」の罫線[2022年Red Dot Award (世界3大デザイン賞の1つ)受賞、ノート罫線として初めて特許を取得]を設計している。

amazon商品説明より