『繁盛店のケーキ店から学ぶ。消費期限1日の経営学』著者:前田省三
を読んだ。
120年の歴史をもつ、ある和菓子店に経営相談で訪れた。
3期連続、営業利益ベースで赤字になっていたのだ。
その原因は、驚くことに原価率が70%を越えていることだった。
製造原価は、材料費、労務費、工場経費から成るが、
なかでも材料費が突出して高かった。
しかし、計算上は材料費の原価に占める割合は高くはない。
じゃあ、どうして?
ヒアリングするうちに分かったのは、
主力商品のまんじゅうの消費期限が3日なのだが、
その日のうちに売れないとすべて破棄してしまうことだった。
つまり、消費期限は実質1日。
その廃棄率が原価率の高騰につながっていたのだ。
そんなとき、本書『消費期限1日の経営学』に出会った。
著者は、稲盛和夫氏の盛和塾で教えられている「日次採算表」をアレンジして活用。
徹底した数値管理を行い、廃棄率1%、経常利益率10%と、安定して利益を出せる体制を構築している。
しかし、肝はそこではない。
日次採算表とセットで、従業員が自主的に行動できる
「フィロソフィー」を冊子として作り、価値観の共有と浸透を図った点だ。
これにより「やらされ感」や「続ける意味があるんですか?」という反発を抑え、
さらに従業員一人ひとりの成長につながっているという。
著者が営む洋菓子業界では新卒社員は3年で9割が離職するという。
しかし、著者の店では、3年定着率7割を維持している。
それも、「フィロソフィー」を核とした著者のさまざまな工夫の成果だ。
本書の取組みは洋菓子店だけではなく、さまざまな業種に応用が可能だが、
その企業それぞれの「フィロソフィー」をつくること、
それをサポートするのが、われわれ中小企業診断士の仕事だと思う。