文豪・幸田露伴の娘、幸田文の
『崩れ』に、
72歳で立山・常願寺川の「鳶崩れ」を訪れたルポがある。
幸田文は、
「崩れ」に出会い、そのエネルギーに圧倒されながらも、
その愁いと淋しさに感動を覚えたという。
2019年9月18日、水曜日。
その現場に行く。
富山県・立山カルデラ砂防博物館主催の体験学習会に参加するのだ。
しかし、山の崩壊現場を見たいわけではない。
日本一のスイッチバック数を誇るトロッコに乗るのが目的だ。
この立山砂防トロッコは、
18kmの区間に8か所38段のスイッチバックがあり、
特に樺平の連続18段のスイッチバックは、世界でも稀有だという。
でも、工事用軌道なので、
一般人は乗ることができない。
唯一の方法が、この体験学習会に参加することなのだ。
そのためこの体験会は超人気で、倍率が高い。
何度も参加申込みをして、ようやく今回当選した。
なのに、あいにく天気予報は雨。
聞けば、
体験会の半数近くは、
天候不良で毎年中止になるそうだ。
幸い、中止の連絡メールは来なかった。
そこで、
早朝、金沢から富山、
そして地鉄で立山駅へ向かう。
ここまで雨は降っていない。
ただ立山駅は厚い雲におおわれていた。
やがて、雨が。
受付を済ませ、博物館見学を終えて、
外へ出る。
少し、空が明るくなった。
そして、いよいよトロッコに乗車!
おもちゃのようなちっちゃな客車だ。
ディーゼル機関車も小さいが、
スイッチバックするのに先頭にしか連結されていない。
スイッチバックって、車のバックみたいに
文字通りバックして進むんだ!
山の奥へ進みながら、
山肌をスイッチバックでどんどん上がっていく。
線路が輻輳している感じは、
鉄道好きにはたまらない。
ただ、乗っている身には、
前進後退を繰り返し、
高度が急速に上がっていくだけで、
特段おもしろいものではない。
まあ、
「乗ったことがある」
という事実が大切なんだろう。
11:20、終点「水谷平」着。
ここでお昼だ。
「あゝ、今日の目的は終了!」
と思ったが、ここからが本番だった。
(つづく)
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