「おーっ!」
金沢の老舗料亭「大友楼」があつらえた松花堂弁当。
その蓋を開けた瞬間、
その彩りに心奪われる。
大友楼七代目当主が日本の食文化について語る。
それを聞きながら料理をいただく。
なんとも贅沢な企画だ。
定員は20名。
往復葉書で申し込み、当選通知が来たとき、
思わずガッツポーズをした。
なんと言っても参加費2,700円の破格値だ。
これで弁当のほか、椀物、加賀棒茶、鯛の唐蒸しがつく。
思わず、
「お値段以上、○トリ〜」
と口ずさむ。
さあ、いただきます!
刺身。甘海老が輝いている。
口取。七品それぞれ違う味わいと食感を楽しむ。
煮物は金沢の郷土料理の治部煮。
肉はかしわ。麩は金沢特有のすだれ麩だ。
とろみのついた甘辛い汁とわさびが合う。
当主自らが取り分けてくれた別盛りの鯛の唐蒸しは、
たっぷりのおからの味付けでいただく。
食べながら、当主の話は続いている。
話のテーマは「五節句」について。
五節句とは、江戸幕府が公式行事として定めた、
人日(じんじつ)、上巳(じょうし)、端午(たんご)、
七夕(しちせき)、重陽(ちょうよう)の5つ。
このそれぞれに節句料理があるそうだ。
人日(1月7日)の七草がゆをはじめとして、
上巳(3月3日・ひな祭り)の菱餅、
端午(5月5日・菖蒲の節句)のちまきは
(なるほど)
と思うが、
七夕(7月7日・たなばた)のそうめん、
重陽(9月9日・菊の節句)の菊酒は初耳だ。
食のそれぞれに由来がある。
庶民の生活が食文化の根底に流れている。
美味しければそれでいい。
今までずっとそう思ってきた。
だが、食べることは生きていくうえで大切なこと。
ならば背景にある食文化を理解することは重要だ。
美味しさの裏がわにあるもの。
それをしっかりと理解して食べる。
次世代にもきちんと伝えていく。
伝統とはきっとそういうことなんだろう。