「空から謡が降ってくる」
そう呼ばれるほど、金沢は古くから「能」が盛んだという。
「加賀宝生」と呼ばれる能は、五代藩主前田綱紀の頃に始まり、
現在、明治34(1901)年設立の金沢能楽会がその伝統を受け継いでいる。
しかし「能」にはあんまりいいイメージはない。
セリフ何を言ってるか分からないし、動き少ないし、歌も暗いし。
たしか高校時代、授業の一環として観た覚えがある。
でも、それっきりだ。
それが、一冊の本に出会って急に興味がわいた。
タイトルはずばり『能』。
著者の「素人に能の魅力を伝えたい」という強い思いに打たれた。
「おじさんの金澤」の旅第一回目は、加賀宝生流の能楽にしよう。
ちょうど「冬の観能の夕べ」が石川県立能楽堂で行われるという。
なるべく多くの人に能に親しんでもらおうと、料金1,000円!
全5回分、迷わず購入した。
そして当日。
「最初に見るなら、正面席がいいかもしれません」(『能』)
というアドバイスに従い、正面席最前列に席を確保した。
客席は7割くらいの入りか。
さすがに高齢者が多い。
14時半開演。
まずは、金沢美術工芸大学の村戸先生による番組の解説があった。
ズブの素人にとって、観る直前の解説はありがたかった。
仕舞「東北」
続いて、狂言「成上り」が上演され、
最後に能だ。
演目は「高砂」。
『高砂や、この浦舟に帆を上げて・・・』
という謡は、結構披露宴の定番だそうだ。
さっきロビーでもらった「詞章(セリフ集)」をひざ上に広げて開演を待つ。
舞台左手「橋掛り」の「揚幕」の向こうから「囃子方」のお調べが聞こえてきた。
いよいよ「初めての」能が始まる。