温泉街に人影はなかった。
平日、猛暑の真っ昼間。
(こんな日に温泉なんて!)
誰もがそう思うのだろう。
2018年7月30日、月曜日。
青春18きっぷの旅1日目(前回はこちら)。
金沢からここまで8時間のテツ旅。
ここでひと息、
城崎温泉で外湯のどれかひとつに浸かろう。
しかし今日は、外を歩くのもしんどい暑さだ。
温泉に入るなんて危険過ぎる!
どうしよう?
温泉街を歩きながら考えた。
(露天風呂ならいいんじゃない?)
露天なら「御所の湯」にある。
内湯も大きなガラス扉が開けられ、
川が正面の高いところからこちらに向かって、
滝のように流れてくるのだ。
(そこならなんとかなるだろう)
そう思い、温泉街の奥まで歩いた。
御所の湯はガラガラだった。
正確に言えば、男湯は無人だった。
しかし、ここまで歩いたせいで汗だくだ。
さっそく湯船に浸かろう。
と思ったが、湯船の縁で足が止まった。
(本当にこの熱い湯に入るのか?)
身体が嫌がっている。
身体のぜんぶの細胞が嫌がっている。
(そうだ! 露天風呂だ)
そう思ってここを選んだのだ。
外へ出た。
ダメだ!
お湯に入るどころか日差しが痛い。
この炎天下、
裸で外に出るなんて狂気の沙汰だ。
(せめてお湯ではなくて水だったら・・・)
――人はそれをプールと呼ぶ。
湯船にはさっと浸かっただけで、
洗い場で身体を洗う。
汗を流すとさっぱりした。
いい気分で御所の湯を出たら、
また、汗が吹き出した。
このままだとすぐに、
温泉に浸かる前の状態に戻ってしまうではないか。
そうだ、ここはビールだ!
間違いない!
温泉街を少し戻ったところにある
「城崎温泉地ビールレストラン グビガブ」
に入った。
クーラーが強めに効いていて涼しい。
客は誰もいない。
まずはジョッキで「ピルスナー」(¥700)
雑味がないクラシックラガーでぐびぐび飲める。
落ち着いたところで黒ビールの「スタウト」。
今度はグラスで(¥500)。
空腹なので苦味と甘みが嬉しい。
ああ、生き返った!
ホロ酔い気分で、ひとこと今日の感想。
ーー温泉入んなくて、よかったんじゃね?