戦禍に遭わなかった金沢には古い町並みが残る。
その中に、3つの茶屋街がある。
主計町、にし、ひがし。
残っているのは建物だけではない。
今も芸妓が50人ほどいる。
芸妓をひとり呼べば3〜5万円というから、
なかなか茶屋に上がるわけにはいかない。
庶民には縁がない。
そう思っていたら、手軽に芸妓の芸に触れられるイベントを見つけた。
芸妓の技能向上委員会主催の「金沢芸妓の舞」だ。
立派な名前の委員会で驚くが、
石川県が芸妓の伝統継承をバックアップしているそうだ。
全27回。
3茶屋から各回芸妓が参加して芸を披露する。
料金は、1,000円。
せっかくなので、3茶屋それぞれに申し込んだ。
イベントは1時間程度。
芸妓の踊りが3つほどあって、
そのあと太鼓芸を披露。
残り時間は観客が太鼓遊びに参加する。
3回とも同じ段取りだった。
芸妓はアイドルではない。
酔客に媚びを売る酌婦でもない。
あくまでも芸を魅せるアーティストだ。
女だけのプロの世界。
毎日けいこに励んでいる。
そう思うと、
あだやおろそかに鑑賞するわけにいかない。
三味線と唄にあわせ舞う芸妓の姿を、
少し緊張しながら見つめる。
観客の過半は女性だった。
彼女らの目に芸妓はどう映るのだろう。
若さや色香に惑わされない分、芸の確かさが求められる。
芸という無形の資産を次世代に残していく。
変わらないもの。
変わっていくべきもの。
そのバランスを行政が主導して取っていく。
石川県の英断というべきだろう。
金沢を訪れる人たちは「金沢らしさ」を求める。
金沢にしかないもの、味わえないもの。
この芸妓の舞は、きっとそのひとつになる。
胸を張ってみんなに勧めたい。